※この記事は海堂尊氏の小説『プラチナハーケン1980』他とTBS系ドラマのブラックペアン、ブラックペアン2の個人の感想です。ネタバレおおいにあります。
ブラックペアン、ブラックペアン2、原作小説の感想ミックス
小説とドラマと
私がまず最初に出会ったのは小説のブラックペアン1988、ブレイズメス1990、スリジエセンター1991でした。
プラチナハーケン1980は新作なのですが、時系列的には一番最初になるのですね。
内容的には渡海先生がなぜ「オペ室の悪魔」と呼ばれるようになったのかという話です。
プラチナハーケン1980では、なんと渡海先生と天城先生がお茶をするシーンがあるんです。
ただ、原作とテレビドラマの設定は全く違うので、ここだけ取り出すと誤解を生みそうです……ですが、両方のファンである私は正直驚きました。なにしろ、ブラックペアン2があんな終わり方でしたから、ファンとしてはぜひ見たいシーンでした(笑)
それはさておき、原作とテレビドラマの違いについて個人の所感をメモしておこうと思います。
それぞれ、タイトルの後の数字は小説の舞台になる年なので、そもそもドラマとは時代が違いました。
ブラックペアン
主な違い
主人公:ドラマは渡海先生、原作では世良先生が主人公。
ドラマは心臓外科の話だけど、原作では腹部外科。(だから「スナイプ」の用途も違うのです)
そして渡海征司郎の言動。これは違うと思った。
原作の渡海先生とドラマの渡海先生の言動は違うのですが、ドラマの渡海先生もすごく魅力的でした。
でも原作の渡海先生の声が脳内で二宮さんの声で再生……ということはなかったです。
ドラマの渡海先生は強烈ですが、原作の渡海先生には「1000万で云々」というセリフはないのです。
原作と違うとは思いましたが、私は渡海征司郎役の俳優さんの(二宮さんの)ファンになりました。
同じ部分:結末
渡海先生が東城大病院を去ることと、その原因となるブラックペアンの事案は、外科の違いはあるけど、エピソードとしてはほぼ同じ。佐伯教授はやむなくペアンを留置していたのも同じ……なので、このあたり、ドラマを見ながら、あぁやっぱりそうなんだ、そうだよね……と思いました。
ブラックペアン2とブレイズメス、スリジエセンター
ブラックペアン2の天城先生を初めて見たときは、「嘘やろ」と思いましたね。
ブラックペアンの渡海先生がドラマでは別人だと思ったと書きましたが、天城先生は原作から抜け出してきたのかと思いました。天城先生の設定自体は(モンテカルロとオーストラリア、双子等)全然違うのですが、キャラクターとしての天城先生は私の原作中のイメージそのもの、まさにこんな外見、所作の人だろうと思ったのです。
同時に、あーこれはやっぱりラスト天城先生死ぬんだなと思いました。1のラストが原作通りだったので、きっと2でもそこは譲らないだろうと思ったのです。
(でも、オーストラリアから日本へ帰還するときにヘリに乗らなかったので、少しは期待したのですが)
原作とドラマの違い
まず大きな違いとして、原作はブラックペアンと何の因縁もない、ということでしょう。
原作の、天城先生が登場する「ブレイズメス」と「スリジエセンター」は渡海先生が出てくる「ブラックペアン1988」とストーリーの関連はないです。(背景や世界観は同じです。海堂先生作なので)
世良先生が佐伯先生に頼まれて海外に天城雪彦を迎えに行く。天城先生は天才だが賭けで手術するかどうかをきめるトンデモ(?)医師 / 天城先生は過去に患者を悪性高熱で術死させたことがある / このあたりは大枠同じです。
天城先生の過去にまつわる個人的な設定は完全ドラマオリジナル。だからスリジエセンターの部分はかなり違う。
テレビドラマはオリジナルのとても素敵なストーリーだと思います。
渡海先生が再びみられてとてもうれしかったのです。(正直、原作のブラックペアン1988のラストシーンは、「続きがないなんて勘弁して」と思いましたから)また、稀代の天才が二人もいたけどその理由は血筋なら、納得もいきますし。
そして、原作の最後では「絶望と(世良先生の)怒り」が描かれたのに対して、ドラマの最後には希望があると思います。
多分一番大きな違いは原作ではスリジエセンターは完成せず、ドラマでは完成したこと。
あと、世良先生と花房さんの関係。
でもこれも、原作とドラマのスタンスの違いの現れだと想像しています。
同じ部分
先に書いた大枠以外にも、天城先生が活躍するオペシーンの部分は原作をなぞっている部分もあると思います。
私が思う一番の類似点は天城先生の儚さとラストのプロット。
天城先生がまた活躍してくれるのでは……と思わせて、実は死んでたというくだりですね。
原作と同じ手法が、設定は違うとはいえドラマでも使われて、「ううっ」と来ましたね……。
原作の天城先生は、モンテカルロの星であったのに、日本では世間に受け入れられず、スリジエセンターでは失脚していくのです。桜をハートセンター完成予定地だった場所にジュノと植えるシーンは哀愁……。
原作の設定は全くドラマと違うのですが、天才なのに薄幸、桜のように美しく咲いて散る天城先生の存在が共通なのが、すごいところなのだよなあと思います。
そもそもの大きな背景の違い
原作はそもそも、メインの作品群の、「過去編」なのですね。
海堂尊氏の作品での本流(?)はおそらく……
有名な「チームバチスタの栄光」の主人公は田口先生。この人はドラマのブラックペアン、ペアン2にもいらっしゃいますよね。速水先生もいて、このあたりは原作ファンとして嬉しいところでした。
しかも、バチスタ他本流の作品中で田口先生は外科医ではなく、(どの作品中かは忘れましたが)外科医にならなかった理由を「昔、オペ室の悪魔といわれた渡海先生という人がいて……」とあげていたと思います。
この時、病院長は高階先生。(そもそも原作のスリジエセンターで佐伯教授を追い出し、病院長になるのは高階先生。原作ではセンターは完成しないので)
そして世良先生は20年後極北ラプソディで、別の病院の病院長に。まだ、天城先生の思い出を引きずっています。
原作のスリジエの最後で世良先生は天城先生を追い出した日本の医療界に切り込むことを誓っていて、その続編。
原作スリジエでは恋人だった花房さんと再会し再び結ばれることもあり、いい話でした。
スリジエセンターの過去話がないと、極北の感動はないと思います。
ところでドラマのブラペ3はあるのか?? 以下は勝手な考察と願望。
プラチナハーケンがもし、ブラペ3になるなら、過去編なのですよね。原作とドラマが全く違うのでないんじゃないかと思いますが、天城先生もでてくるから、どうにかしてやってほしいかも。映画とかスピンオフとか期待。
でも、もっとやってほしいのは、おそらく可能性は低いと思いますが、ドラマのオリジナル設定でのスリジエセンターの話。世良先生も渡海先生も東城大に帰ってきた未来が、ファンとしては見てみたいです。
(世良先生の空白の20年の間にそんなことがおこったと、海堂先生が新作書いてくださらないでしょうか……)
天城先生は思い出枠の登場で、ブラペ2にはないけど原作にはある、派手な車やバイクを乗り回すシーンとか見てみたいですね~~(夢)
その他の小ネタ、つぶやき
- ドラマのブラックペアン2での天城先生は41歳。倒れて手術になった日は2024年9月27日。第8話~9話の手術室のホワイトボードに患者の情報があるのを、パソコンで見返していて気が付きました。……それは主役の俳優さんの年齢と同じですよね^^